お留守番もやもや

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聞いてないよ、その旅行が奴と一緒だなんて。あんな男のどこがいいんだ。前は僕のことを『大好き』と言ってくれたのに。彼女は僕のものだったのに。彼女の手は僕を撫でるためにあるはずなのに。
そりゃあ前よりは体重は増えてしまったけど、成長期なんだから仕方ないよ。
ついカッとなって、彼女の手を引っ掻いてしまった。
「痛っ」
謝るもんか。
傷を見て僕のことを思い出せばいい。
男がその傷を見て、彼女が誰のものかを思い知ればいい。

翌朝、彼女は大きな荷物を抱えて出掛けてしまった。
謝ったほうがよかったかな…。
彼女のいない夜を越えて、彼女のいない朝を迎えた。
よし、謝ろう。
彼女が帰ってきたら、笑顔で「おかえり」って言おう。それから「ごめんなさい」って謝ろう。

夜になって、ようやく彼女が帰ってきた。
玄関まで出迎えた僕を見つけて、彼女は「ただいま」と言った。
僕はとっておきの笑顔で答えた。

「ニャア」
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公開:18/06/02 23:22

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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