僕の願いは

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『これは願いが叶う石だよ。君の欲しいものをお願いしてごらん』

そう言って、慰問に来ていたらしいピエロは小さなガラス玉を僕に渡した。
(叶うわけないじゃん…)
もちろん僕は信じなかった。それはただのビー玉にしか見えなかったし、いくら願っても事故で失った家族に会えるわけはなかったから。
でも、なぜか捨てられなくて…寂しくなる度にその小さなビー玉を握りしめていた。

「それ、まだ大事にしてたのね」
ビー玉を見てぼんやりしていたらしい僕に彼女は声をかけた。
「ああ。願いが叶う石だからな」
「ふふ…願いごと、叶った?」
「叶った。今日はカレーだろ?大好物」
一瞬きょとんとした後、彼女は笑いだした。
一緒に笑って、彼女の少し膨らんだお腹を見ながら、僕はこのビー玉は本物の'願いが叶う石'なんじゃないかと思っていた。
だって、あの時の僕の願いは…

『また、家族と幸せに暮らしたいです』
ファンタジー
公開:18/06/03 21:15

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