おっさんと俺

14
108

僕と男以外にコンビニには誰もいなかった。ガランとした店内に、俺は両腕を背中で縛られ拘束されている。男は、まっすぐ僕に銃口を向けていた。
「こないっすね。警察」
「こないな……」
俺たちは蒸し暑い店内の中、ぼんやり呟いた。ついさっきまで「人質を解放しろ」から「故郷のお母さんが泣いてるぞ」までのくだりが終わったところだ。男の要求は三千万と逃走用の車。次は警察が仕掛けるターンなのだが動きがない。
「お前、怖いだろ」
「怖いのはおっさんもでしょ?」
向けられた銃口は震えていて、撃ったら反動で男が怪我しそうだ。
「俺に6発の弾丸撃ち抜いたところで、誰がおっさんのことを守るんだよ」
どう見ても男は、俺なんかよりよほど苦労人に見えた。
「暇だし、一緒に逃げるか」
「……なんで?」
「わざわざ破滅を選んだ男の話を聞きたいから」
世界に見放された男にしてやれる、唯一の事だから。
そして俺達は、特急に乗った。
その他
公開:18/06/01 12:30
更新:18/06/01 12:26
その後成田空港で確保 とばっちりで俺自身も逮捕 未成年だからお説教で釈放 俺は待つぜおっさんの恩赦 ※絶対に真似しないでください

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
a.co/1VIyjHz

『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

こちらで写真を紹介、ハガキにと販売しております!
https://minne.com/@sakoyama0705  - ハンドメイドマーケットminne(ミンネ)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容