竜宮城

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毎晩のように酒を呑んだ
最高の料理だった
乙姫との会話も楽しかった
自分の知らない世界の話に耳を傾ける
それに彼女は、とても美しかった
側にいてくれるだけでうれしかった

呑み疲れた翌日は、昼過ぎまで床に入っていた

寂れた漁村での暮らしとは、雲泥の差だ
子供たちが虐めていた亀を助けてから人生が変わった

どれくらいの日々が過ぎたのだろう
乙姫が
「そろそろ、村にお帰りになりますか?」
と聞いてきた
竜宮城では、私以外の客人を見たことがなかった
きっと、私が帰ると乙姫も寂しくなるだろう
「もうしばらく居るよ」
といって何度か滞在を延長した

目を覚ますと、乙姫が神妙な面もちで顔をのぞき込んでいる
小さな紙切れを差し出しながらこう言った
「このあたりで一度ご精算をお願いします」

私は、もう一度布団に潜った
ファンタジー
公開:18/06/02 12:13

海山 道三

ペンネーム
海山 道三
みやま どうさん

「文章千本ノック」の一環で超ショートショートを投稿させていただきます

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