願いよ、かなわないで!

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カウンターに座ると、スコッチのダブルを頼んだ。
1人でバーに入ることなどなかったが、今日は帰宅がためらわれた。
バーテンダーがスコッチを置いた。
そして短冊とペンを差し出す。
「ひとついかがですか?」
店内を見渡すと、笹の枝が飾られている。
「七夕か……」
「かなって欲しくない願い事をお書き下さい」
俺は目を丸くする。
バーテンダーが、まあいいから、と頷く。
『沙織が居なくなりますように 光彦』
昨日、妻の沙織と大喧嘩した。最近、諍いが多くなり、新婚の頃の彩りがない。離婚も頭をよぎる中、最も起こって欲しくない願い事を考えたら、これだった。
「奥様のことを大切に思ってらっしゃる」と、バーテンダーが微笑む。
「いや……」
「かなって欲しくない願い事を書くと、見えなかった本心が見えるのです。少し前に……」と、もう一枚短冊を差し出した。
『光彦が目の前から消えますように 沙織』
僕は家へと走った。
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公開:18/06/02 09:30

十六夜博士

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