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「おはいりなさい」
天鵞絨(ビロード)のような声が私の脳内に木霊する。
岩だと思っていた姿形はなんと波間に浮かぶ女性だった。
哀しみと甘さが入りまじった音波のようなものに誘われて一歩…一歩と彼女に近づいた。
「痛みに溺れているんだね…取り除いてあげられたら…」
彼女の寝顔に触れたいという感覚に襲われた私を何かが制した。
安らぎと平和に満ちた表情。薔薇色に染まった頬。
長い睫毛に絡み付いた泡沫さえ美しい。
――― 死してなおも生きる。
一心に恋い焦がれ、愛する歓びを知り、大切なものを命とひきかえに差し出した。
愛は失われた。
感情が焼かれた先に見えるのはどんな景色なのだろうか。
すっかり老いて渇いてしまった唇を彼女に重ねようと身を乗り出した瞬間
巨大な波が私の足をさらった。
「おかえりなさい、あなた。」
天鵞絨(ビロード)のような声が私の脳内に木霊する。
岩だと思っていた姿形はなんと波間に浮かぶ女性だった。
哀しみと甘さが入りまじった音波のようなものに誘われて一歩…一歩と彼女に近づいた。
「痛みに溺れているんだね…取り除いてあげられたら…」
彼女の寝顔に触れたいという感覚に襲われた私を何かが制した。
安らぎと平和に満ちた表情。薔薇色に染まった頬。
長い睫毛に絡み付いた泡沫さえ美しい。
――― 死してなおも生きる。
一心に恋い焦がれ、愛する歓びを知り、大切なものを命とひきかえに差し出した。
愛は失われた。
感情が焼かれた先に見えるのはどんな景色なのだろうか。
すっかり老いて渇いてしまった唇を彼女に重ねようと身を乗り出した瞬間
巨大な波が私の足をさらった。
「おかえりなさい、あなた。」
ファンタジー
公開:18/05/31 20:28
更新:18/05/31 20:34
更新:18/05/31 20:34
透明な声。日々温めている思いを誰かに手渡したくてショートショートを書いています。
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