母なる物件

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「やり直したいんです」僕は身を乗り出した。
「大学受験も失敗。歌手を目指し上京したけど、それも挫折。その後職を転々とし、ようやく自分のやりたい仕事が見つかったんです。だからこんな普通の部屋ではなく、もっと自分らしい部屋に住みたいんです」
「そこまで言うのでしたら…」店員はファイルを閉じた。「いいところがあります」
店員に導かれ、僕らは車で向かった。

「ここです」車を降りると目の前に海が広がった。
「えっ、物件は?」と僕が聞くと、店員は海を指さした。
「ここで人類が誕生しました」
「そうか…」僕は気づいた。38億年前に原始生物がここで生まれ、4億年前、初めて両生類が陸に向かったことを。
「お客さん」店員は夕日を指さした。「あの日の両生類も、この夕日を見ていたのです」
「ありがとう。ここに決めます。ここから新しい人生を歩めそうです」
夕日は僕らを照らした。新たな出発を祝福しているようだった。
青春
公開:18/05/31 18:50
更新:18/05/31 21:45
物件 引っ越し

数理十九

第27回ゆきのまち幻想文学賞「大湊ホテル」入選
第28回ゆきのまち幻想文学賞「永下のトンネル」長編佳作
一期一会。
気の向くままに書いては、読んで、コメントしています。
特に数学・物理系のショートショートにはすぐに化学反応(?)します。
ガチの数学ショートショートを投稿したいのですが、数式が打てない…
書こうと考えてもダメで、ふと閃いたら書けるタイプ。
最近は定期投稿できてないですが、アイデアたまったら気ままに出没します。

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