Drink the Sea

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ある所に、猛悪なる方策で隣国を制圧している王が居た。そんな彼が唯一難渋していたのが海に囲まれた国、素。素は黄金の国と噂されていたが、荒波に守られ近づく事すら叶わなかった。
「誰か!如何なる手段でも良い!あの海を渡る方法を申してみよ」
皆が閉口する中、一人の男が前に出た。
「私が」
彼は以前、王の側近だった。だが王に異を唱えた為、四肢を落とされてしまった。
「ほう、お前に何が出来る」
「海水を呑むのです」
翌日、王は兵を率いて男と共に海岸へ。男は醜悪なる笑みを浮かべると、顔を海面に浸けた。すると波が吸い込まれ、海底が見えた。
「よし!出陣だ」
男を馬で押し退け、海を渡る。全ての兵が海へ降りたのを見計らうと、男は大声をあげた。
「王よ!実は私、素の出身でして!素は私の様な忌術師達が住まう所。黄金の国でも何でもない!」
王は振り返るが、時既に遅し。奇矯な笑声を上げ、男は口から高波を吐き出した。
ファンタジー
公開:18/05/31 18:38
更新:18/05/31 19:37
ダークファンタジー

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