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「雨降ってきた!」
隣で男子が言っている。
「よかったら、これ」
私は傘を差し出した。
「でも、お前のないじゃん」
20cmの身長差だから、優しい声質のセリフが降りてくる感じ。
「私はもう1本あるから、大丈夫」
絞り出せるだけ絞って出した声。
「ホントか?」
「ホントにあるから」
見せてみろって言われたらどうしようとドキドキ。
「ありがとう、じゃあ借りてくよ」
男子は土砂降りの雨の中を歩き出して行った。
崩れそうになる身体を必死の思いで支え、教室に戻る。
いつもの私の席に着き、雨音を聞く。
静かに雨音を聞いていると、あの時の事が蘇ってきた。

「消しゴム落ちてるよ」
はいって差し出された。
「ありがとう」
私は驚きのあまり、気の無い返事をしてしまう。頬が赤くなるのが分かった。

私は、たった消しゴムを拾ってくれただけなのに好きになってしまった。
恋の始まりに理由はない、って私は思ってる。
青春
公開:18/05/31 15:44

まりたま

いつか絵本を1冊出せたら...
そう思いながら書いてます。
少しだけホッコリしていただければ嬉しいです。
でも、たまにブラックも書きますけど。

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