温かな祈り

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「かあちゃん、来たよ」
と駆け出す息子に、気をつけて、と声を張る。
沖が明るいと気付いた息子が「灯来だ」と叫び、浜辺まで見に行くと言うので、連れて来たのだ。
息子は、膝下まで波に浸かり、近くまで漂ってきた光源をひとつ取り上げた。円筒型の薄紙を纏った灯火は、息子の笑顔と胸元をやさしく照らし出す。

海と空とが溶けあう処に、万灯國はある。名の通り、無数の灯明が全土を彩る島國だ。
食卓の明かりも街灯も、民が灯したものは一つもなく、すべて異郷から流れ着く灯りを再利用している。灯りが海原に現れることを、灯来と呼んだ。

息子の手にした灯明の囲いには、彼が画き散らすのによく似た大胆な筆致で、母子だろうか、手を繋ぐ人の姿絵と、文字が記されている。
異國の文字で、意味は解らない。だが、そこに込められたものは、伝わる心地がした。

この光を灯した誰かにも、幸福が訪れていますようにと。

波の彼方へ祈った。
ファンタジー
公開:18/05/31 08:40

rantan

読んでくださる方の心の隅に
すこしでも灯れたら幸せです。

よろしくお願いいたします(*´ー`*)
 

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