海のカーテン

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海沿いにある雑貨店の片隅で、小さく折り畳まれたカーテンが売られていた。
店主によると海を描いたカーテンだそうだが、畳まれているので柄はよくわからない。けれど透明感のある綺麗な紺碧に心惹かれた私は、そのカーテンを買って帰ることにした。

広げてみると、それはイメージとはずいぶん違うものだった。
アクアリウムやダイビングのような海中を描いたものではなく、海面を上から切り取った柄だったのだ。
思い描いていたような派手さはないもののたゆたうドレープは波のように美しく、私はそのカーテンにつかの間見惚れた。
そのとき、カーテンの海面がドレープを越えて高く、一際大きくうねった。
驚く私をよそにそこへ大きな影がさすと、
ざっぱーん!
海面から飛び出した鯨の尾が、轟音をたててカーテンの海面を力強く叩いた。

私は尾から放たれた水飛沫で全身ずぶ濡れのまま、既に凪いだ海のカーテンを、ただ呆然と見つめたのだった。
ファンタジー
公開:18/05/31 23:11
更新:18/06/02 06:58

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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