忘れ形見の海苔の缶
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私のおばあちゃんの家の棚には、たくさんの写真立てと、空っぽの海苔の缶が1つ置いてあった。
「どうして空っぽの缶、捨てないの?」
「海苔の缶には海の思い出が詰められるのよ」
「何も入ってないよー」
「思い出は詰めた本人にしか見られないのよ。あなたにも1つあげるわ」
それから私は、おばあちゃんの家に遊びに行くたび、缶に海の思い出を詰め込んだ。おばあちゃんが亡くなったとき、私の海苔の缶は満杯になった。
七回忌法要も終わり、おばあちゃんの家には兄の家族が住んでいる。
今でも、棚の上には海苔の缶が2つ置いてある。
私の缶を開けると、詰め込んだ海の思い出が鮮明に浮かんだ。続いて、おばあちゃんの缶に手を伸ばした。何度開けても何も見えないとわかっていても、おばあちゃんの思い出に浸りたくて、錆びた缶を力ずくで開けた。
「あーっ!うみー!」
振り返ると5歳の甥っ子が驚いた顔でこちらを指をさしていた。
「どうして空っぽの缶、捨てないの?」
「海苔の缶には海の思い出が詰められるのよ」
「何も入ってないよー」
「思い出は詰めた本人にしか見られないのよ。あなたにも1つあげるわ」
それから私は、おばあちゃんの家に遊びに行くたび、缶に海の思い出を詰め込んだ。おばあちゃんが亡くなったとき、私の海苔の缶は満杯になった。
七回忌法要も終わり、おばあちゃんの家には兄の家族が住んでいる。
今でも、棚の上には海苔の缶が2つ置いてある。
私の缶を開けると、詰め込んだ海の思い出が鮮明に浮かんだ。続いて、おばあちゃんの缶に手を伸ばした。何度開けても何も見えないとわかっていても、おばあちゃんの思い出に浸りたくて、錆びた缶を力ずくで開けた。
「あーっ!うみー!」
振り返ると5歳の甥っ子が驚いた顔でこちらを指をさしていた。
その他
公開:18/05/31 22:20
北海道出身です。
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