浮上

　気持ち良く海で泳いでいた僕に、突如として悲劇は起きた。なんと両足が同時につってしまったのだ。
　僕は必死になってもがいた。しかし、慌てれば慌てるほど、僕の体は海の底へ底へと沈んでいった。
　やばい。息が苦しい。意識が遠くなってきた。僕、もうダメかも。
　
　しかし、ここで奇跡は起きた。僕の体が突如として浮き始めたのだ。さっきまで苦しかった息も、不思議と楽になった気がする。これはランナーズハイならぬスイマーズハイってやつかな。
　もう少し、もう少し、はあー。なんとか外に出られたぞ。危なかったー。
　あれ？　僕の体、まだ浮いてる気がする。やばいやばい。空中に浮いちゃってるよ。どうしちゃったんだよ僕の体。どんどん高くまで浮いていくぞ。怖い怖い。僕高所恐怖症なんだよ。誰か早く僕を下ろしてくれー。

　こうして僕は、このまま天国まで浮上していった。