ワイパー505

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「お早うございます」ヨレヨレに羽織ったレインコートの襟元を押さえ、芹沢警部はロープをくぐった。
「警部、遺体の手に、これが握られていました」
鑑識が手渡した紙片を、芹沢警部はじっと見つめる。
「『ワイパー505』……」
「どういう意味ですか?」先に到着していた部下の横山が尋ねると、「そうか……」と言うなり、芹沢警部はいつものように背中を丸めてどこかに歩き去っていった。

二日後、犯人は逮捕された。芹沢警部のいつもの推理で事件は一気に解決されたらしい。新聞を読んでいる芹沢警部に横山は尋ねた。
「例の『ワイパー505』ですが、どういう意味なんですか?」
すると芹沢警部は「煙草煙草……」と言いながら小銭を持ってドアの方に歩いていった。そして部屋を出るなり、横山を藪睨みしてニヤリと笑った。
「君はまだ新人だろ。まあ、経験積めばそのうち分かるよ」
芹沢警部はそう言って、鼻歌まじりに部屋を立ち去った。
ミステリー・推理
公開:18/05/31 21:26
更新:18/05/31 22:11
サスペンス

数理十九

第27回ゆきのまち幻想文学賞「大湊ホテル」入選
第28回ゆきのまち幻想文学賞「永下のトンネル」長編佳作
一期一会。
気の向くままに書いては、読んで、コメントしています。
特に数学・物理系のショートショートにはすぐに化学反応(?)します。
ガチの数学ショートショートを投稿したいのですが、数式が打てない…
書こうと考えてもダメで、ふと閃いたら書けるタイプ。
最近は定期投稿できてないですが、アイデアたまったら気ままに出没します。

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