海ぼうず

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彼は暗い夜の海に、海鳴りとともに現れる
暗くてよく見えないがあまり大きくは無いようだ
彼は少し寂しげな声で「柄杓を頂戴」と僕に話しかけてくる
僕は穴の開いた柄杓を海へ投げ入れる

彼は柄杓を取り水を汲もうとするのだが、穴の開いた柄杓ではいくら頑張ろうとも水は穴から抜けてゆく
それでも彼は一生懸命に何度も何度も水を汲む
その姿がなんだか可笑しくて、つい夜な夜な彼の元へ会いに来てしまう
10分程経つと彼は息を切らしながら震えた声で「もう 帰る...」と言い残し、暗い海へと消えて行く

彼は会う度に大きくなっていき、気がつくと僕よりも大きくなっていた
そしてある日
彼はいつもの様に「柄杓を頂戴」と僕に言う
僕はいつもの様に穴の開いた柄杓を投げる
すると彼は「良いこと思いついたんだ!」と言い柄杓の穴を海藻で塞ぎ始めた
穴のない柄杓で彼はどんどんと水を汲み、あっという間に僕と船は海へ沈んでいった
ホラー
公開:18/05/31 01:48
更新:18/05/31 02:06

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