海のフェスティバル

青年は鯨たちと、海の日に開催するフェスティバルの打ち合わせをしていた。今年のテーマは「花」だ。
海の日。夕日が沈むのを合図に、港の会場にファンファーレが鳴り響いた。と同時に、イルカたちは海上から次々に飛び交い、月光のアーチを描く。鯨が、その下を潜り抜けるとエメラルドに輝いた！海蛍を纏っているのだ。会場からワッと歓声が上がる。青年がボートからホイッスルを吹く。今かと待ち構えていたホタルイカの群れが、光を放ちロケット花火のように、海空へ舞い上がった！海上に光の花が現れたのである。青年がホイッスルを吹くたび形を変え、次々と大輪の花を咲かすのだ。それは、万華鏡のようであった。そしてフィナーレ。鯨が上空へ潮を吹き上げると、海蛍の群れがキラキラと花びらのように舞い落ちた。
大歓声の中、青年はマイクを取り、鯨のメッセージを伝えた。

「共に生きよう、この世界を。共に生きよう、この美しい海の永遠を願って」