海中都市

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地球の海面上昇が止まらない。地球上は海水で覆われ、とうとう陸地と呼べるのはエベレストの先端だけになった。
人類は陸地に住むのを諦め、海中で暮らすようになった。住居用の小形潜水艦が開発された。
一部の富裕層は海面近くの陽の光が差し込む場所に住んだが、多くの民衆は太陽がほとんど射さない薄暗い海中で暮らしていた。
食料は魚介類と海藻。潜水服を着込んで魚を狩に泳ぐ。
家畜や野菜を栽培する潜水艦もあるが、それらは高値のため一般庶民の手には届かない。食糧の少なさから人間はどんどん淘汰されていった。

そのうち、人々は潜水艦をコントロールしなくなった。潮の流れに任せて移動するようになったのだ。

富士山が噴火したらしいと聞いたとき、私は赤道近くを漂っていた。富士山を見なくなって何年たつだろう。春に花見をしていたのが夢のようだ。こんなに海の近くにいるのに海水浴ができないなんて、誰が想像しただろう。
その他
公開:18/05/30 18:55

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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