七夕の夜に

0
103

今日は七夕。
あちこちで笹が飾られ、願い事の書かれた短冊が揺れている。
「ばっかみたい」
都会の片隅、とあるバーで、女がつぶやく。
「一年に一度しか好きな男と会えない女が、どうして他人の願いまで面倒みられるってのよ」
女はお酒をあおるように飲む。
「ましてや、あの馬鹿の浮気のせいで、ここ100年くらい会ってすらいないっての」
ばーかばーかと、管を巻く彼女の元に、しゅっとグラスがカウンターをすべってきた。
「なによ」
「あちらのお客様から…」
あちらには、すまなそうな顔をした男がひとり。
「なによぅ…」
「ごめん、織姫」
女はどなる。男はただひたすら謝る。
小一時間、二人はすったもんだして、それから肩を寄せあってでていった。
これで今年は願い事も叶うかな。
私の役目も果たせました。
バー『かささぎ』は、これにて閉店。
SF
公開:18/05/30 18:43

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容