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私は長年の研究により「挿し海」の技術を確立させた。ソメイヨシノが挿し木というクローン技術によって日本中に広がったように、沖縄の海を日本中に広げようという試みだ。沖縄県波照間島から若い海を剪定し、別の台海に挿し海をする。適切な管理を10年間行う事により、沖縄の海のクローンを作り出すのだ。離島で行った実験は上々の成果を上げた。この技術が公開されれば私のノーベル化学賞は間違いない。残るは国の認可だけだ。
大臣がレポートに目を通して渋い顔をした。
「これ、沖縄の観光協会が黙ってないよね。それに10年も海水浴や釣りが出来ないとなると、色々な業界が困るんだよね。沖のほうでやるってのはどう?あ、そしたら漁業が困るか…」

そんな事よりも地球の未来が大事です!

私はその言葉を飲み込んだ。
失念していた。その通りだ。
大トロが10年も食べられないのは嫌だ。
絶対に耐えられない!

私の研究は無駄だった…。
SF
公開:18/05/29 00:06

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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