中古車の誠実

昼下がりのカフェで、友人の夏子は私に向けてきっぱりと言った。
「男は絶対中古車乗りよ」
「はあ」
夏子の言葉が聞こえたのか、はす向かいの中古車販売店前に立てられたのぼりが、バサッと誇らしそうにはためく。
「新車に乗ってる男って信用できないのよね。すぐ嘘くつし、誰にでもいい顔するし」
「はあ」
夏子はこの前彼氏と別れたばかりだという。
「それに比べて中古車を選ぶ人って実直で誠実じゃない？　言葉にも態度にも、嘘がないのよね」
「はあ」
そして新しい彼氏ができたらしい。
「中古車の人はいいわよ。なんたって裏表がないもの！」
力強く拳を握る夏子の後ろで、中古車販売店ののぼりが逆風にばさりとひっくり返った。
途端、私の視線は裏返しののぼりへと釘付けになる。

中古車には裏表がない。

裏返ったのぼりと夏子の主張が符合して、私は思わず
「確かに」
と呟いた。