海水ソムリエ

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グラスに注がれた液体を見つめて浅倉源治はため息を漏らす。
世界中の海水を味わってきた海水ソムリエの源治にとっても、これほどの透明度に出会える事は稀だ。
ゆっくりとグラスを揺らして香りを楽しむ。
「波間から太陽の光がキラキラ輝いている。温暖な気候だ。微かにハイビスカスやジャスミンの香りがする。美しいサンゴ礁が見えるよ。いや、白化したサンゴと、再生した新しいサンゴもだ。複数のサンゴが重なりあって濃厚な香りを演出している。そうか、沖縄か!」
ボトルを持った男が目を見開いた。
「その通りです」
この道40年の源治にとっては、この程度のブラインド・テイストはお手の物だ。
「新しいサンゴの割合から考えて、2018年物かな?」
「お見事」
源治は微かに笑みを浮かべた後、海水を一気に飲み干した。

ごくんっ

「うっわ!しょっぺえええっ!」

日本で唯一の海水ソムリエ浅倉源治。
後継者は見つかっていない。
その他
公開:18/05/29 22:58
更新:18/05/30 13:02

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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