分身世界

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朝、起きてまずやることといえば、分身だ。
「んー、起きた起きた」
「うっわ、ご飯足りないよ」
「昨日みんな疲れてたでしょ、各自買って食べてよね」
途端に賑やかになるが、全部僕。
「今日は仕事してくるよ」
「積んである小説読み進めとくね」
「うーん、それじゃあ掃除と買い物かな」
各々身支度をしながら、今日の役割を確認して、多少言い争いなんかも挟んで、ようやく一日が始まる。

夜、寝る前にやることといえば、合体だ。
一人の人間に戻った時分かれていた僕達の記憶データが全てひとつになる。
仕事の内容も、読んだ小説の内容も、買い物した内容も、それぞれに伴う感情も。
「いやあ、今日も充実してたね」
その言葉に返事をくれる人がいない夜は、少しだけ寂しい。
SF
公開:18/05/29 20:54

どーみや

空に煌めく星を優しい声で包んでいる空間が好きな者。
他愛ない日常を書き留めておきたい。

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