車内ルール

電車内の迷惑行為を防ぐために、電鉄会社がお客さまの声を取り入れ、車内に審判を置くことになった。審判は全員講習を受け、資格を取得したものには審判バッジが与えられた。利用客にはファウルなどの禁止行為が掲載されたルールブックが配布された。
　審判が配置されてから、確かに迷惑行為は激減したのだが。
ピーッ。そこ、前の乗客を故意に足で蹴らないように。
ピーッ、あなた、プッシング、手や肩で押さないように。
ピーッ、ブロッキング。進行の邪魔をしないように。
ピーッ、ほら、ホールディング、つかんでるね。

毎日の通勤がこんな調子である。しかも…。

ピーッ、ピピーッ。
あなた、30秒以上同じ女性を見つめていましたね。

その時、車内の電光掲示板に5ファウルの文字が現れた。
私は退場となり、電車を降りた。
今日もまた会社に辿り着けない。