うみ手市場

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「ここも海岸線が後退しているな……」
ため息混じりに呟く。
海が後退し、むしろ広々とした砂浜では、何組かのグループがはしゃいでいる。
ーー何かしでかさないと良いが……。
海の現実を知る海洋研究所研究員としてヤキモキしていた。

『地球温暖化で海面が上昇する』
かつて信じられていた神話だ。
現在、世界的な人手不足が深刻なように、海にも海の担い手が足りない海手(うみで)不足が起こっている。海手になるのは、雨なのだが、海を大切にしない人間たちのパワハラに耐えかね、海手になっても直ぐに蒸発していく。これが世界的な海手不足を起こしている。その結果、海面が上昇するどころか、海が干上がり始めている。それを打開するために、俺は今日も奔走する。俺の小さな活動が売り手市場の海手を増やすと信じて……。

注意深く見守っていると、若者の一人がペットボトルを海に放り投げる。
「あっ、君たち!海はゴミ箱じゃないぞ!」
ファンタジー
公開:18/05/27 08:23

十六夜博士

ショートショートを中心に、色々投稿しています。
よろしくお願いします。

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