涙色の海

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白い病室で彼女は言った。
「もう…行かなくちゃ。でも、最後に海が見たかったな…」


僕はひとり歩いた。
骨になってしまった彼女を抱いて。
彼女の好きだった海を目指した。

空は青く美しかった。
風はとても心地良かった。
でも、彼女のいない世界は霞んで見えた。

歩いて、歩いて。

海に辿り着いたとき、涙が溢れた。

僕の涙は、深い青の海に落ちた。

すると、海は澄んだ水色に彩(いろ)を変え、波紋が彼女を映し出した。
彼女は言った。
「ありがとう」と。

僕は泣いた。
幼子のように泣いた。

海は揺らめいていた。

その日の海は、とても澄んだ涙色をしていた。

僕は一生、この海を忘れることはないだろう。
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公開:18/05/27 00:50

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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