海の自動販売機

　変わった自動販売機を見つけた。普通の販売機のように見本の缶が並んでいるのだが、それぞれ「日本海」「アドリア海」など、海の名前がついているのだ。
　とりあえず「日本海」を買ってみる。家に帰って、さっそくグラスに「日本海」をあけてみた。
　透き通ったブルーの液体がグラスに満たされていく。それはまさに「海」そのものだった。グラスに目をこらすと、小さな魚が泳ぎ、サンゴ礁のようなものも見える。
　ふと思い立って、つまようじとテグスで釣竿を作ってみた。乾き物のかけらをちぎってグラスの中に垂らしてみると、ミニチュアの魚が釣れた。
　今度はもう少し深くまで釣り糸を落としてみる。すると、今度はミニチュアの潜水艦が釣れた。潜水艦は、別のグラスに浮かべるとチロチロと泳ぎ回って、可愛かった。

『臨時ニュースです。本日午後３時頃、日本海近海を探索していた日本の潜水艦『しんかい』が突如行方不明となり……』