赤い波、青い涙

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「楽しいんだね」
少女が僕に話しかける。
楽しいよ、と体を揺らす。
「やっぱり。今日は凄く綺麗な青よ。それにお日様もお月様もお星様もみんなあなたの中でキラキラしてるの」
そう教えてくれる少女も僕の中でキラキラしていた。

別の日、少女は俯いて僕の前に立つ。
「雲をいっぱい食べたでしょう?食べすぎは良くないわ」
バレちゃった?と笑えば、少女は少しだけ顔を上げて笑ってくれた。

それから何年経っただろう。
少女は、少女ではなくなって、僕の前に立っていた。
「ごめんね、ごめん…守ってあげられなかった」
ううん、僕が君を守りたかっただけだよ。すっかり赤くなってしまった体を揺らして答えたら、彼女の瞳から、懐かしい青色が零れた。

僕の色は君が大事に取っていてくれたじゃないか。それだけで、十分だ。
その他
公開:18/05/28 09:16

どーみや

空に煌めく星を優しい声で包んでいる空間が好きな者。
他愛ない日常を書き留めておきたい。

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