亀のいなくなった時計塔

その街には、高くそびえる時計塔があった。
街のシンボルだ。
塔は長い間、時を刻み続けていた。
それはそれは長い間、1万年。
しかし、今はその動きを止めていた。
長い間ずっと時計守を行っていた亀が亡くなってしまったのだ。
街は時計塔の管理者として、新たな時計守の募集を掛けた。

応募者の亀はこう言った。
「私ならば、1万年、この時計塔を守っていくことができます」

応募者の鶴はこう言った。
「私ならば、1千年、この時計塔を守っていくことができます。それに空も飛ぶことができますから、修理も容易です」

応募者の人間はこう言った。
「私ならば、時計塔のメンテナンスを自動化したこの機械を使うことによって、人件費を掛けずに全てを行うことができます」

街は応募者の選定を行い、次期の時計守として選んだのは、亀であった。
その決め手は、1万年の間、機械のメンテナンス費と人件費が掛からないことであった。