海のキャラメル

0
100

青色のそれをなめると海だった。

長方形の箱がテーブルの上に置いてある。先週出て行った彼女のものだろう。
彼女はもう戻ってこないだろう、と想いを断ち切るつもりで箱を開けた。
ピカピカ光る青いキャラメルを僕は初めて見た。
僕は滅多に甘いものを食べないが、宝石みたいなそれを口に入れる。
「甘い」とか「やわらかい」とか「おいしい」とか、そんな感想ではない。

「海」だった。

口に入れた瞬間、キャラメルは溶けて海水になる。口の中ではリズムよく波が打って心地よい。
海水なのに何故かしょっぱい訳ではない。
でも確かに海だった。
そういえば彼女は海が好きだった。
付き合い始めた頃はよく海へ行った。
同棲して二年。随分海へ行っていないことに今更気付く。

箱の中のキャラメルはあと五つ。
このキャラメルがある限り彼女のそばにいられる気がして、心の拠り所になるだろう。
僕はもう一つ、キャラメルを口に入れる。
恋愛
公開:18/05/25 20:38

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容