侍石

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武道の神様が祀ってある神社。その一角に人の身長ほどの石がある。人呼んで「侍石」。この石に竹刀で打ち込む。石が割れたとき、誰にも負けない剣士になれると言い伝えられている。

全国から腕に覚えのあるものが訪れ、挑戦していく。
しかし、未だに石を割った者はいない。それどころか、石に打ち込める者もほとんどいない。
なぜなら、石はお地蔵様の形をしているのだ。
挑戦者たちは石を割ることを諦め、代わりに侍石のかけらが入っているというお守りを買っていく。これが神社に大きな利益をもたらしている。

この話を聞いた過疎っている神社の宮司が、自分の所でも何かできないかと考えた。
その神社が祀っているのは暗算の神様なので、巨大な石のそろばんを置いた。そしてこれで計算ができれば暗算が強くなると噂を流した。
人がやってきて「ご破算で願いましては」と動かそうとするが、全く動かない。
そして神社は破産してしまったそうな。
その他
公開:18/05/25 19:53
更新:18/05/25 22:30

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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