おばあちゃんの願いごと

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「天国へ行きたい」

一際目立つ黄色の短冊に私は目が離せなかった。自分のおばあちゃんが書いたと聞いて、そして何よりも天国へ行ったと知って驚きを隠せない。

「丘の上を登ったらそこは天国じゃった」

和子ばあちゃんは、残り少ない歯で語り始めた。

「丘の上には千住観音様がいて、天国はあちらですと指した方向がちぐはぐでなー。右へ行ったらそっちは地獄ですって。左に行こうとしたらそっちも地獄ですって言われてん」
「結局どうしたの?」私は興味深い顔で見た。

「千住観音様が言わはるにはもと来た道に帰りなさいと。そこがあなたの天国だって。こうしてばあちゃんは、ここへ戻って来たんじや」

おばあちゃんは時折鼻を膨らせながら言った。

「っでここへ孫の元へ戻って来たっと・・・そういえばじいちゃんはどこ行ったん?」

「はて? 地獄へ行ったかもしれんのう」

おばあちゃんはにっこりと観音様のように笑った。
その他
公開:18/05/25 19:04

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