流れ星イン・ザ・ダーク

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「南の空でまた星が倒れたらしいぞ」

誰かがそのニュースを告げたとき、流星たちは揃って深く落胆した。また動ける者が減ってしまったのだ。

僕ら流星がブラックな環境に置かれるようになってからはや幾星霜。余裕のない日々のなかで流星の少子化は加速し、必然労働力は不足、いち流星あたりの負荷は増大し続けた。
流星群ともなれば、ひとつの流星が何度も何度も滑降を迫られる。体力は限界をむかえ、過労から倒れてしまう星が少なくないのも現状だった。

「昔は良かったよな。降った分だけ飯が食えたんだから」
「今の人間は、空なんて見上げねえからなあ」
遠くを見つめながら、団塊の世代の流星たちが昔を懐かしむ。
流れ星にかける人間の願い。
流星のエネルギー源は、その願いなのだ。

『どうか人々が願いをかけますように』
きたる夏に降るペルセウス座流星群に向けた準備をしつつ、倒れゆく仲間の星たちの横顔に、僕は三度願った。
ファンタジー
公開:18/05/25 19:01
更新:18/06/11 21:41

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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