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お兄ちゃんたら、ま〜た虫になってる。
今度はいつまで引きこもるつもりかしら──。
「グレーテ、兄さんへ林檎を持っていっておやり」
「はーい」
ママったらお兄ちゃんには甘いんだから。
「お兄ちゃん入るわよ」
部屋に入ると、兄は黒い大きな落花生のような物に包まれていた。
「ママ、お兄ちゃんが、お兄ちゃんが!」
兄の部屋へは立ち入り禁止になった──。
数年が経ち、兄の事を忘れかけていたある日の事。
メリメリメリッ、と大きな音をたてて固い殻が二つに裂けた。
兄は脱皮して「成虫」になったのだ。
「だいぶ時間がかかっていたから心配したわよ」
「これでお前も立派な大人だ」
ママとパパが、兄に祝福の言葉をかけた。
「ありがとう」
「よし、今から父さんと会社に行くか?」
兄はうなずくと、パパと一緒に羽を広げて飛び立った。
兄のような大人になる日を待ちわびて、私は部屋の壁をゴソゴソと這い回った──。
今度はいつまで引きこもるつもりかしら──。
「グレーテ、兄さんへ林檎を持っていっておやり」
「はーい」
ママったらお兄ちゃんには甘いんだから。
「お兄ちゃん入るわよ」
部屋に入ると、兄は黒い大きな落花生のような物に包まれていた。
「ママ、お兄ちゃんが、お兄ちゃんが!」
兄の部屋へは立ち入り禁止になった──。
数年が経ち、兄の事を忘れかけていたある日の事。
メリメリメリッ、と大きな音をたてて固い殻が二つに裂けた。
兄は脱皮して「成虫」になったのだ。
「だいぶ時間がかかっていたから心配したわよ」
「これでお前も立派な大人だ」
ママとパパが、兄に祝福の言葉をかけた。
「ありがとう」
「よし、今から父さんと会社に行くか?」
兄はうなずくと、パパと一緒に羽を広げて飛び立った。
兄のような大人になる日を待ちわびて、私は部屋の壁をゴソゴソと這い回った──。
ファンタジー
公開:18/05/26 13:53
更新:18/09/17 18:30
更新:18/09/17 18:30
(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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