海でよかった……

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またここに戻って来るなんて……。
月明かりの下、真夜中の砂浜をゆっくりと歩き始める。
ーーこの辺り……。
ちょうど5年目、ここに座って海を眺めていた。目の前の海には、サーフィンをする彼。いつものように波に呑まれて転倒する。でも、彼は2度と自力で上がってこなかった……。
心の底から海を憎んだ。

最近、占いをした。5年前の出来事も話した。占い師は、(心の棘を抜かない限り幸せになれない。でも、海で良かった……)と、貝殻をひとつ渡してくれた。
(命日の真夜中、彼が亡くなった場所で耳に当てなさい。彼の声が聴こえる……)

貝殻を耳に当てと、潮騒の音が聴こえる。
(私、結婚するの……ごめ……)
心の中で、ごめんと言いかけてやめた。謝ることなのか分からなかったから……。
潮騒の中から懐かしく優しい声……。
(うん……)、と心の中で頷く。
月明かりが膝の上に落ちた雫を光らせた。
ーー海でよかった……。
ファンタジー
公開:18/05/26 09:13
更新:18/05/28 22:09

十六夜博士

ショートショートを中心に、色々投稿しています。
よろしくお願いします。

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