夜泣き

6
114

 赤ん坊の泣き声がする。
 仕事で遅くなった帰り道、近道にと土手を歩いていた。
 周辺の住宅は寝静まっている。夜中に泣かれて母親は大変だろう。
 そう思いつつ先を急いでいたが、進んでもずっと聞こえる泣き声が次第に薄気味悪くなってきた。
 いても立ってもいられなくなり思わず走り出したが、何かにつまずき転んでしまった。
 地面から生えたたくさんの赤ん坊の手が足首をつかみ、ふくらはぎを経て太腿に這っていく。胎児たちの丸い頭がぽこぽこ出てくると下腹部に向かって先を争った。
 そういえば昔この川には望まずしてできた子を流したという伝説がある。
 そんなことを思い出したが、といってどうすればいいかわからない。
 下腹がどんどん膨れてくる。
 やめて。わたしは母親じゃない。
 ぱんっ。
 破裂音がして股間が温かく滑る。
 遠のく意識が見たものは泣きながら地面に戻っていく赤ん坊たちの後ろ頭だった。
ホラー
公開:18/05/24 12:19

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容