連続小説 三つの願い

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月のオルゴール。その音は癒しの音色。傷付き破れた心の裂け目を優しく埋め、繕ってくれる。月のオルゴール。その音は死の音色。言うなれば人を魅了するセイレーンの歌声。聞いたものを虜にし、魂を喰らう。ああ、気高き月の聖霊よ。我が願いを叶えておくれ。どのような望みですか。私はあの人に会いたい。あの人がいないこの様な世界など、もうどうでも良いのです。お願いです。あの人を生き返らせて。お願い。それは冥界の王に直接、ご相談ください。月の聖霊がそう言うと、サーヤの魂は月のオルゴールの中に吸い込まれた。そして冥界へ。兄さん、見たかい。ああ、見たよ、弟よ。ケケケ、馬鹿な娘だ。生きた人間が冥界に行ったらどうなるか知らないのか。知るはずないよ、兄さん。だって彼女は人間だもの。僕達みたいにあの世とこの世を行き来したりしない。この後どうなるかな。それは冥界の王次第さ。でも、今まで冥界から帰って来た人間はいないけどね。
公開:18/05/23 19:18

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