募集要項

「求む！元スリ」
何気なく開いた就職情報誌にその文言はあった。
「経験に応じて高給待遇。指導力ある人優遇。現役応相談」

スリを続けて10年。そんな俺を求めている職場はどんなところだろうか。電話をし、職場見学をすることにした。
行った先は、倉庫の様な空間だった。そこにAIロボットがひしめき合っている。

「このロボットたちを教育していただきます」案内係が言う。
え、スリロボットを作ってるんですか？
「いえ、盗るのではなく渡す、ティッシュ配りロボットです。人間とすれ違いざまに、相手の懐や鞄にティッシュを入れる。目標は手渡し率100%です」

面白そうなので働いてみることにした。俺が実践をして見せると、さすがAI、学習が早い。あっという間に手渡し率99%までいった。しかし、最後の1%がクリアできない。どうしても手渡せない相手がいるのだ。

一体奴は何者なのか？話を聞くと、スリ担の刑事だった。