思春期の履歴書

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「で、約束のものは?」
固い表情で腕組みをしたまま、彼女のお父さんはムスリと僕へ言った。
僕はしっかり返事をすると、恭しい手つきでお父さんへと二枚の紙を手渡す。一枚は学歴と職歴の書かれた通常の履歴書。そしてもう一枚は、思春期の履歴書だ。
「ほう、初交際は十七歳と」
「はい」
「で、本当は?」
「え?」
「真実だ。十六か? 十五、十四、十三……十三か。早いな」
「あ、あの」
「では次」
お父さんは間髪いれず尋問のように質問を繰り出す。それも僕が詐称した思春期の痛い部分を次々と見抜いていくので、僕は冷や汗がとまらない。
刻々と険しくなっていくお父さんの表情に、僕は挨拶の失敗を覚悟した。出直すしかない……そう思った時。マナーモードにし忘れた僕のスマートフォンから、爆音の「リンダリンダ」が流れ出した。
瞬間、お父さんは弾かれたように僕を見た。

思春期の履歴書が、かさりと重なる音がした。
その他
公開:18/05/22 21:06
更新:18/06/14 20:34
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ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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