三つの願い

0
110

男は出口に向かい歩みを進めた。背後からは最愛の妻、真美子の足音が聞こえる。ペタッ、ペタッ。足音が変な気がする。真美子、後ろで何かあったのかい。あなた、後ろを振り向いてはいけないとお願いしたはずです。ああ、そうだったね。しばらく行くと今度はパリッ、パリッと別の音が聞こえてきた。真美子、何の音だい。あなた、黄泉の世界を出るまでは私に話しかけないで下さい。皆、私達を黄泉の世界に連れ戻そうといろんな誘惑を仕掛けてきます。そんな誘惑に惑わされないで下さい。ああ、分かったよ。さらに行くと出口の明かりが見えてきました。もうすぐ出口だね。あそこを抜ければ君は晴れて生き返ることが出来るよ。真美子は無言でした。男は背後から真美子が来ていると信じ、出口を抜けた。すると目の前には看板があった。天国へようこそ。しまった。道を間違えた。彼は背後を振り返った。あなた。真美子、ワザとではないのだ。お願いだ。信じてくれ。
公開:18/05/23 18:42

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容