泡沫

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彼女はじっと海を見つめている。
いつものシードルを注文し、カフェバーの窓越しにただただ海を見ている。
想い人が海の向こうに居るのだろうか。それとも遠い異国に思いを馳せているのだろうか。
ほぼ毎日来てくれているのだが、未だに彼女の瞳に写っているものは分からない。
かと言って、何を見ているか聞くのも野暮ったい気がして腰が引けている。

とても静かな空間。この時間帯は大抵彼女と僕の2人だけなのだ。

たまに僕も海を眺める。さぁっ…と優しい波の音に身を委ねていると思わずこくりこくりと舟を漕いでしまう。
はっと顔を上げると、彼女が微笑みながらこちらを見ている。
僕はバツが悪くなってうつむいた。

もう少しでバータイムに向けてお客さんがやって来る。準備を始めようとふと彼女の方を見ると、お代と「また来ます」というメモだけが残っている。

僕は密かに、彼女を「人魚姫」と呼んでいる。
その他
公開:18/05/21 20:36

WAかめ( 山の中 )

ぽやぽやと思い付いた物語を書いております。素晴らしい作者の皆様の作品を読みながら勉強中の万年初心者。よろしくお願いいたします。

マイペースに投稿再開していければ良いなぁと思ふ今日この頃。

不勉強なもので、もしどなたかの作品と似た内容を投稿してしまっていた場合はご指摘頂けますと幸いです。
 

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