未来へ

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夜明け前の紫色に染まる空。
境内の澄んだ空気には二人の声と、新聞配達の音だけが響く。
「もし…」
続きの台詞が出てこなくて、ぼくは口を閉じた。
若過ぎるぼくらには、出会いも、時間の流れもあまりに早過ぎた。
まだ愛の言葉を知らないぼくらは、必死に互いの存在を確かめ合うように、最初で最後のくちづけを交わした。
明るくなった境内に佇む古びた外灯が最後にジリリと鳴いて、消えた。


潮風と轟音。
雲一つない青空の中、大きく旋回して小さくなっていく飛行機を、ぼくは直視することができなかった。
いつか辿り着く未来でも青空の色が変わらぬよう、ぼくはただ、願った。
青春
公開:18/05/21 12:11
更新:18/05/21 16:48

TAMAUSA825( 東京と神奈川 )

登場することが趣味です。

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