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今は昔、丁髷頭が腰に刀をさしている時代、人と妖怪が夫婦になるなんてことはよくある話だった。
僕のご先祖様だってそうだ。大層物を大切にする人で、それを代々受け継いできた。
ある日、そんな道具が人の形となり、ご先祖様はその付喪神と結婚した。
遠い過去の話だ。現代では妖怪はおろか、付喪神すら見かけることはない。もういなくなったのだろう。
それでも僕らの一族は物を大切に扱った。
僕も子供の頃から愛用している番傘を何度も自分で張り替え、使っている。
周りからは変わり者だと笑われていた。

ある日、いつものように番傘を張り替え終わると、番傘が美しい女性の姿に変わった。
「私、番傘の付喪神でございます。是非とも貴方様と夫婦になりたく、こうして人の姿になりました」
頬を朱に染める女性。僕も彼女に一目惚れし、すぐに結婚に踏み切った。

番傘とは別名、つがい傘。
人生を捧げる相手を常に探す健気な道具である。
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公開:18/05/22 19:10

幸運な野良猫

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