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昔、波が恋をしました。
その相手は、淡く輝く大きな岩でした。
波は、近くを通りかかる度に話しかけたり、そっと手を触れたりしました。少しでも仲良くなりたかったのです。

しかし、そんなある日。波はふと気がつきました。初めて会った時よりも岩は小さくなっていたのです。
崖の下に立つその岩は、打ちつけてくる波で少しずつ体が削れてしまっていたのでした。

波は度々会いに行った事を後悔しました。ですが、できてしまった流れは止められません。
それでも気になって見に行く度、岩は小さくなっていき、とうとう一欠片の体になってしまった時、岩は言いました。
「黙って立っているだけの私に会いに来てくれたのは君だけだった。次はいつ来るのか、考えるだけで幸せだったよ。ありがとう」
そして静かに消えていきました。

波は泣きました。いつまでも泣き続けました。
そしていつの間にか、海の水はしょっぱくなってしまったのでした。
ファンタジー
公開:18/05/22 18:49

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