願い通りの味がする飴

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商店街の隅にある駄菓子屋。そこでは奇妙なお菓子が売り出されていた。
「願い通りの食べ物の味がする飴だよ」
眉唾ものだったが、私は一袋だけ購入して帰ることにした。
食べたいものを思い浮かべてから口に含む。お婆ちゃんの言った通りに飴を放り込むと、不思議な出来事が起きた。
行列店のパンケーキ。回らない寿司屋の大トロ。街一番のバーのカクテル。飴を舐める度に、思い浮かべた味が舌に広がり、私は歓喜した。
気付けば、飴は最後の一粒となっていた。最後にどんな贅沢を願おうか考えるが、どうしても思い浮かばない。私は曖昧に「今までの人生で最高のご飯」とだけ願って、飴を放り込んだ。
すると、どうだろう。
私は、ぽろぽろと涙を流していた。
喉を震わせながら、飴が無くなるまで、ゆっくりと丁寧に、その味を噛み締めた。
亡き祖母の、塩っ辛くて温かい味噌汁の味を。
ファンタジー
公開:18/05/22 10:05

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