願い事

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『あの人に出会えますように』
 短冊に願いを書いて笹に吊るす。
 図書館に行くたび出会う人。背が高くてハンサムで。
 一目惚れだった。
 そっと本棚の間から覗いたり、隣にさりげなく座ったり。
 でも梅雨が過ぎた頃から会わなくなった。
 まさか気付かれて嫌われた? 
 ただ見ているだけでよかったのに。高望みなどしていなかったのに。
『あの人がここに来てくれますように』
 もう一枚書いた。
 七夕様ならわかってくれますよね。
 願いを込めて二枚目を吊るす。
 図書館の入り口に設置された笹飾り。
 横に置いたテーブルには短冊とペン。
 風に揺れる願い事はほぼ子供たちのものだったが、わたしの願いが一番叶うように思えた。
 
 七夕が過ぎた数日後、図書館にあの人がいた。
 首の骨が折れて血に濡れて。
 すでにこの世にいない人だったのだ。
 他の誰も気づかない。
 これはわたしの願い事だから。
ホラー
公開:18/05/20 12:59

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