味のある冒険家と海

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冒険家の俺は、大海に忽然と現れた伝説の淀みにたどり着いた。小型船である海域に乗り込むと、後はうず潮のような海流が勝手に導いてくれた。
ーーこの海流が創ったのか。まるで蟻地獄の底のようだ……。
船上から、海水を汲み上げ、口に含む。
ーーこれは!
今まで体験したことのない味。究極の出汁といって良いだろう。
昆布、鰯、鰹、飛魚、海は出汁の原料の宝庫だ。
『自然が創る究極の出汁』
ここは命を終えた出汁の素が海流で集められ、自然の出汁となったスポットだ。
ーー海とは、生命のみならず、グルメの母なのだ......。
味のある海に出会い、海の偉大さを再認識した俺は心の底から充実していた。

感激の嵐が去った後、ふと考えた。
ーーはて?この海のブラックホールのような場所から、海流に逆らって戻れるのだろうか......?
まあいい。しばらくは出汁を楽しむか。味のある冒険家とは逆境を楽しむものだ。
ファンタジー
公開:18/05/20 11:57
更新:18/05/28 22:25

十六夜博士

ショートショートを中心に、色々投稿しています。
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