たまや~!

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 線路を挟んだ向かいのホームに彼が立っている。
 高校を卒業して、彼は予備校で勉強、私は大型書店で働くことになった。
 一緒に同じ大学へ進学する予定だったのに、正反対に向かう電車に乗ることになったのは、受験勉強を怠けて毎日二人で遊んでいたせいだ。

 夜になって、私は七夕の花火大会を見るため彼と河川敷に座っていた。
「織姫と彦星が年に一度しか逢えないのは、恋愛に夢中になりすぎて仕事を怠けていたからなんだってさ」
「まるで私たちみたいだね」
「それはどうかな?」
 明かりがなく手元が暗い中、彼が私に二枚の紙を渡してきた。

 ひゅー、どかん、ぱらぱら

 夜空に大きな大輪が咲き、二枚の紙に書かれているものを明らかにしてくれた。
 一枚目はアパートの見取り図で、二枚目は婚姻届だった。
「俺もバイトするからさ。一緒に暮らさないか?」
「たまや〜!」
 私は嬉しさのあまり立ち上がって叫んでいた。
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公開:18/05/20 09:45

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