王の海が欲しい

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むかしむかし、農耕が始まった頃
狩猟や漁と違い、貧富の差が生まれ始めた
今でいう京都の東あたりに王の都があった
権力を持つとどんな物も手に入れたくなるのが世の常
「王の海が欲しい」
と言ったものだから、さぁ大変

役人が集まり、この難題について話し合った
ある賢者は、策があると請け負った
「周りの民から王に貢ぎ物を集めよ」と

昆布、アワビ、米、野菜ありとあらゆるものが都に集まってきた
「代わりにこれを持ち帰りなさい」
と辺りの土を袋に詰めて渡した
数ヶ月の間に大きな穴となった

異変が起こりはじめた
民の間に、袋の中身がただの土だと知れ渡りはじめた
都から出た辺りで皆が土をこっそりと捨ててしまった
策は、失敗したかに思えた

何日も雨が降り続いた
その穴はあたかも大きな海のように
王は、たいそう喜んだ

以来、王の海が転じてこの辺りのことを”おうみ”と呼ぶようになったとか、ならいないとか
その他
公開:18/05/20 08:22
更新:18/05/20 13:00

海山 道三

ペンネーム
海山 道三
みやま どうさん

「文章千本ノック」の一環で超ショートショートを投稿させていただきます

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