一昨年の願い

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七夕、私はベランダに笹を飾る。短冊に願いを書いて吊るせば叶う。
急に夫が帰ってきて、私は驚いた。
彼は笹を見咎め、鼻で笑った。
「そういう少女趣味があったんだな」
「趣味なんかじゃないの。七夕の願いは叶うのよ」
「へえ、どんな願い?」
夫は鞄や背広をソファに投げた。
私はため息をこらえて答える。
「去年の願いを取り消してもらうの」
「ハハ、ずいぶん都合がいいな」
「ええ、でも、去年は上手くいったわ。一昨年の願いを取り消してもらえた」
「てことは今年の願いは取り消しの取り消しになるよな。つまり一昨年の願いが叶うのか。一昨年は三年前の取り消しとか言うなよ」
「三年前はあなたと結婚したいって願ったの」
「ふうん。それで肝心の一昨年の願いは?」
そう言いながら夫は消えた。

私は一昨年、夫に消えてほしいと願ったのだ。
また一年経てば恋しくなるかしら、織姫と彦星のように。
今は心底うんざりだけど。
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公開:18/05/20 01:33
更新:18/05/20 01:55
七夕 結婚

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