置いてけぼりの傘

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何日も雨が降り続いている。
鬱陶しい。
傘立てから乱暴に傘を取った。
「それ、わたしの」
後ろから急に女の声が聞こえ、振り返って「ごめん」と無意識に答えていた。
「使いたいならいいよ。私走って帰るから」
彼女は走って会社を出ていってしまった。
「あ、いや、返します」
俺の言葉は雨音に遮断され彼女に届かない。

「あれ、俺の傘がない」
「さっき男の人が持っていったよ」
また彼女だ。そばかすに八重歯。特徴がわかりやすい。
「いまどんな気持ち?」
「むかつく」
「むかつくと思うけど、傘を奪った人は助かってるよ」
「そうだとしても」
「だからわたしの傘使っていいよ」

気になり彼女の部署の同期に聞いた。
「ここにそばかす八重歯の子いたよね?」
「え?彼女交通事故で亡くなったじゃない」

なぜ彼女はどこにでもあるビニール傘を自分の物ってわかるんだろうか。
「あなたには見えないの?染められた赤い血が」
ホラー
公開:18/05/20 23:58

oto( 茨城 )

Otoです。
ショートショートは全く造詣がなく拙い文になりがちですが、めげずに読んでいただけるとありがたいです。
よろしくお願いします!

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